肝癌の内科治療

肝癌の内科治療については、腫瘍の大きさ、数、脈管浸襲、肝機能を考慮しながら行っています。

腫瘍の大きさと数が一定基準内(3cm 3個以内、または5cm 1個以内)で、肝機能が良好(ビリルビン 3.0 mg/dl以下)であれば、経皮的治療すなわちエタノール注入療法(PEIT)、マイクロ波凝固療法(PMCT)、ラジオ波焼灼療法(RFA)が適応となります。近年とりわけRFAの有効性が注目されています。

肝機能が良好であれば(なぜなら肝癌の治療の予後の判別は背景となる肝硬変または慢性肝炎の状態、すなわち肝機能によって決まるからです)、5年生存率70%以上、10年生存率20%の成績が報告されています。

その基準を満たさない場合の内科治療としては、肝動脈化学塞栓療法(TACE)などの血管内治療があります。5年生存率40%の成績も報告されています。また肝内両葉に多数の肝癌がある場合には、リザーバー留置による抗癌剤動注化学療法が適応になります。

IVR治療(経皮的治療、血管内治療)について、詳しくはこちら

経皮的治療

エタノール注入療法(PEIT)

超音波装置で、肝臓の腫瘍をみながら針をさし、針を通してエタノールを注入する方法です。エタノールによって肝癌は固まって死んで(壊死)しまいます。

マイクロ波凝固療法(PMCT)

電子レンジに使われているマイクロ波と同じ原理です。マイクロ波が当たると水分子の働きが激しくなり、その時の衝突によって高い摩擦熱を出します。この熱を利用して癌を治療します。

超音波装置で肝臓の腫瘍をみながら、細いマイクロ波電極針を挿してマイクロ波を当て癌を焼く方法です。現在は、次に出てくるラジオ波焼灼療法に置き換わり、ほとんど行われていません。

ラジオ波焼灼療法(RFA)

当院では2000年2月からこの治療法を導入しています。

マイクロ波凝固療法と同じく、超音波装置で肝臓の腫瘍をみながらラジオ波焼灼用の電極針(単針式、展開式)を挿し、ラジオ波を当て、癌を焼く治療です。

RFAの適応と副作用

誰でも腫瘍がどの位置にあってもRFAで治療ができるわけではありません。他の手術などで埋め込まれたコイルやステントは大丈夫ですが、ペースメーカーの人は禁忌となっています。腹部手術や腹膜炎の既往のある人も治療を行うかは慎重に決める必要があります。腫瘍の位置が大きな血管や胆管が近いところにある場合や、心臓や腸管など治療の影響が考えられる臓器が近いところにある場合もRFAは適応ではありませんので、他の治療法を選択することになります。

治療中の痛みは、患者様によって全く違うようです。痛くもかゆくもないといわれる人もいれば、重苦しく感じられる人、我慢できないほど痛いといわれる人などさまざまです。痛みの強い人には痛み止めを追加したり、ラジオ波の出力を少し下げたりすることによって対応します。

RFAに使用する針について

展開式の針と単針式の針があります。展開式は何本もの針を格納してあるので、針自体がとても太く、患者様の負担がやや大きいといえます。また穿刺してから針が傘のように展開するので大きな血管や胆管などが近い場合や、腫瘍が肝臓の表面に近い場合などは注意が必要です。

一方、単針式は1本なので、展開式に比べ細くなっています。そのため治療できる範囲も広がりました。1本で広い範囲が焼けるのか?と思うかもしれませんが、ラジオ波は周波数が低いので、波長が長く、密度が低く、長時間で穏やかに広い範囲が焼けるのです。そのうえ、この単針式は針を冷却しながら行うので、温度の急激な上昇を抑え、焦げつき(炭化)を防ぎます。つまり針の温度が上がりすぎて針の周りだけ黒焦げになることがないのです。

RFAは、2004年4月から保険認可となりました。現在、展開式と単針式のものが使用されています。

血管内治療

肝動脈化学塞栓療法(TACE)

肝癌に栄養を供給している動脈にカテーテルという細い管を挿入し、造影剤を入れて肝臓の血管を確認し、癌に行く血管に抗癌剤を入れます。ゼラチンスポンジなどの塞栓物質を使って血管を詰めて、癌に血液(栄養)が行かないようにする兵糧攻めの治療です。

肝動脈塞栓療法(TAE)

TACE同様に、癌に栄養を運んでいる血管を詰めて兵糧攻めにする治療法です。TAEでは抗癌剤を使わず、血管造影に用いたカテーテルから塞栓物質のみを注入します。

肝動注化学療法(TAI)

血管造影に用いたカテーテルから抗癌剤のみを注入する治療法です。肝機能が悪い場合には、こちらの方法を用いることもあります。

リザーバー留置による抗癌剤動注化学療法

癌に行く血管にカテーテルを入れて留置する方法です。外科的に開腹して入れる方法と内科的に入れる方法があります。カテーテルが留置されると目的の血管に抗癌剤を注入することが容易にできるようになり、外来で行うことも可能(外来化学療法)になります。

進行肝癌に対する分子標的薬治療

肝機能が比較的保たれていて、肝臓の両葉に4カ所以上の癌が存在し、門脈への浸潤や、全身(肺や骨)に転移がある場合の治療としては、肝動脈塞栓療法、抗癌剤肝動注化学療法、全身化学療法が主たる治療法でしたが、2009年になって新しい治療方法、すなわち薬剤が保険認可されました。

それは、ソラフェニブ(ネクサバール錠)という薬で、分子標的治療薬と呼ばれるタイプの薬です。

このタイプの薬は、癌細胞において、増殖や病気の進行にかかわる遺伝子や蛋白などの分子の働きを抑えることにより癌の進行を抑える経口薬です。

実際、欧米で600例を超える進行した肝癌患者を対象とした無作為投薬臨床試験で、薬(ネクサバール錠)を飲んだ人の平均生存期間は10.2カ月で、飲まなかった人の7.9カ月に比較して統計的に有意な生存率の差が出ました(シャープ試験)。アジア(中国、韓国、台湾)でも同様な治療成績(アジアン試験)であり、この薬の有効性が示され、日本でも2009年5月に保険認可されました。

この薬の適応は、手術や局所治療の困難な進行肝癌で、肝機能が比較的保たれている人に限られています。

発現率の高い副作用として、高血圧、下痢、皮膚症状(発疹、手足症候群)などがあります。

肝臓の部屋

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