院長 金守良 日本肝臓学会指導医
【はじめに】 B型肝炎の治療を考えるとき、C型肝炎の治療に比較すると、その複雑さ、難しさがわかりやすいと思います。
第一にC型肝炎の治療の目的は「ウィルスを駆除すること」、そして「肝癌の発生を抑える」ことと極めて明確です。ところがB型肝炎の場合は、ウィルスを駆除することは不可能で、その目的は「ウィルスの活動性を沈静化させること」になります。しかし短期的に沈静化ができても長期沈静化は容易ではありません。また肝癌の発生の抑制も簡単ではありません。
第二に使う薬剤の選択です。C型の場合、ウィルスの型、ウィルスの量、年齢などにより差はありますが、現在インターフェロン(またはリバビリンの併用)が唯一の治療法です。B型肝炎の場合、インターフェロンかラミブジン(またはアデホビル併用)の選択が要求されます。
第三にC型に比較するとB型の場合は、臨床像が複雑です。C型とは違ってB型の場合、比較的安定していたウィルス保持者(キャリア)がいきなり重症化したり、若年者に肝癌の発生(C型では若年者の肝癌の発生は極めて稀です)がみられたりするからです。一言でいってB型肝炎の治療はまさに専門医の力量が要求される領域です。
このページでは、B型肝炎の治療方針を当院で経験した症例を含めで簡単にご説明します。 【B型肝炎の治療】 現在、B型慢性肝炎の治療の主たるものは、(1)インターフェロン治療 (2)ラミブジン治療 (3)その他のラミブジン治療法です。それぞれの現状と問題点を述べたいと思います。 <治療の目標>
治療の目標は活動性のB型肝炎を非活動的な状態にもちこむことです。具体的には肝機能とウィルスマーカーの改善と、肝硬変、肝癌の阻止ということになります。活動性のB型肝炎の場合にはHBe抗原陽性の場合が多いのですが、B型肝炎のウィルスマーカーのうちHBe抗原陽性からHBe抗体陽性に転換するのをセロコンバージョンと呼び、このセロコンバージョンが治療効果の最大の目標です。その次にHBe抗原陽性からHBe抗体陽性にならなくてもHBe抗原陽性が陰性化することをセロネガティブといい、セロコンバージョンしない場合の治療の次の目標となります。
HBe抗原陽性→ HBe抗原陰性 かつ HBe抗体陽性 … セロコンバージョン
HBe抗原陽性→ HBe抗原陰性 … セロネガティブ | またHBe抗原陽性の場合は勿論、HBe抗原陰性の場合には、なおさら治療効果判定にはHBV
DNA量の低下が治療において重要な指標となります。とくにアンプリコア法でHBV DNA量で105コピー/ml以下になるとB型肝炎は非活動的な状態と考えてよいでしょう。また活動性のB型慢性肝炎から肝硬変への阻止することが重要であると述べましたが、治療にあたっては慢性肝炎の組織の評価、すなわち肝生検が必要です。生検組織による線維化の程度にはstaging分類
(F1〜F4まで、F4が肝硬変) が重要です。 <(1) インターフェロン治療>
(a) HBe抗原陽性例に対するインターフェロン 80年代、90年代の経験に踏まえて、2000年からはB型肝炎に対するIFN治療はαIFN、またはβIFNとも4週間から24週間の投与が認められています。その治療により日本では24週間投与により投与後6ヶ月後のHBe抗原陰性化率(セロネガティブ率)は15%、投与後12ヶ月後のGPT正常化率は40%の報告です。海外でのデータは24週間投与でHBe抗原陰性化率33%、HBV
DNAの陰性化率は37%(対照群はそれぞれ12%、17%)でした。 (b)HBe抗原陰性化に対するインターフェロン HBe抗原陰性化例については、従来より成績はよくありませんでした。最近の欧米のデータでは、長期投与(6ヶ月以上、できれば1年)で20〜25%の症例でHBV
DNA量が持続的に抑制されています。 (a)(b)ともIFN投与については長期投与が必要であるというのが最近のコンセンサスです。ただC型肝炎と違って長期投与により発癌が阻止されないのは冒頭でも述べた通りです。
<(2) ラミブジン療法>
(a) HBe抗原陰性例に対するラミブジン療法 日本におけるラミブジンの抗ウィルス効果は海外とほぼ変りなく、1年投与のセロコンバージョン率は16〜20%です。
(b) HBe抗原陰性者に対するラミブジン投与 欧米からのデータでは、1年投与で63〜65%にHBV DNAの消失とGPTの正常化を認めています。ただ投与中止後に再燃する率は高いです。
(a)(b)ともラミブジン治療の最大の問題点は長期投与によりB型肝炎ウィルスの変異が年を追うごとに高頻度にみられる(1年30%、3年50%、5年65%)ことです。ウィルスの変異があればラミブジンの効果はなくなり、そのために落ち着いていた肝炎が再発(ブレークスルー肝炎)することがあるのが最大の問題点です。この3年間はB型肝炎の初回治療としてIFNかラミブジン、IFNとラミブジンの二つに限定されていましたが、ラミブジンの耐性化に対する懸念からIFNを若年齢(35歳以下)に使用して、それ以上の年齢にはラミブジンを使用する考えが定着しています。
(C) その他ラミブジンの使い方 白血病癌治療のため化学療法において、抗癌剤を含む化学療法使用により、B型肝炎が増悪されることがあり、そのためには肝炎が落ち着いていても化学療法の前にラミブジンを投与することがあります。ラミブジンの変異がみられたときに、そのレスキューとしてアデホビルの投与が有効であることが国内外より報告され、2004年12月から保険認可されました。
<(3)
その他の治療法> その他ラミブジン投与によるウィルスの変異に対しては2004年12月からアデホビルが認可されました。有望な治療法としてラミブジン+IFNの併用療法、B型肝炎ワクチン療法などが試みられていますが、そのデータは少ないです。その他ウルソの内服、強ミノCの静注、瀉血(しゃけつ:血を抜くこと)、小柴胡湯などが依存療法として用いられています。
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