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GOT(AST)・GPT(ALT)
あらゆる臓器に存在しており、アミノ酸を代謝するときに働く酵素である。臓器が障害されると、そこに存在するトランスアミナーゼは血中に放出され、これを逸脱(いつだつ)酵素と呼ぶ。血中のトランスアミナーゼが高くなるということは、それだけ臓器が壊れているという目安になる。

  1. GPTの上昇で肝疾患を疑う理由
    GOTは肝臓以外にも骨格筋、心筋などにも多く存在する。GPTは主に肝臓に存在するため、GPTの上昇は肝細胞の障害と深く関係している。
    肝組織内のGOTは、GPTに対し約3〜4倍の量が存在する。つまり、健常人ではGOT>GPTはずなので、GOT<GPTの場合には基準値の範囲であっても肝障害を疑う。
  2. GOT・GPTの上昇の形と肝疾患
    GOTが肝臓全体に均一に分布しているのに対し、GPTは門脈域を中心に分布している。肝疾患の障害パターンと、GOT・GPTの値の変化には次のような特徴がみられる。
    • 急性肝炎のように肝臓全体が急激に傷害される場合には、
      GOT>GPTの形のまま上昇する。
    • 慢性肝炎のように門脈域の炎症が中心である場合には、GOT<GPTとなる。
      (ただし、慢性肝炎でも急性増悪期には急性肝炎と同様に肝細胞の急激な壊死が起こるために、GOT>GPTとなることもある。)
    • 慢性肝炎からさらに進行して肝硬変に近づくと、門脈域の炎症が鎮静化し、相対的に肝小葉内の炎症が強くなるので、GOTとGPTの値が接近し、ついにはGOT>GPTとなる。
    • アルコール性肝障害では、ミトコンドリア由来のGOTが上昇するのでGOT>GPTとなる。

TP(総蛋白)・ALB(アルブミン)・γ―グロブリン
血漿中には約100種類の蛋白成分が存在する。これらは分子量の違いにより、大きくアルブミンとグロブリンに分けられる。
肝疾患では、蛋白の総量と分画(ある蛋白成分が総蛋白に占める割合)に変動がみられる。

  • 総蛋白と肝疾患
    一部のグロブリンを除き、蛋白質の大部分は肝臓で合成される。したがって、総蛋白(アルブミンなど)の低下は肝機能の低下を示すことになる。
  • アルブミン・γ―グロブリンの変動と肝疾患
    アルブミンは通常、総蛋白のうち約60〜70%を占め、血漿浸透圧の維持(血管内の水分の保持)に重要な役割をもつ。このため、肝硬変が進行して蛋白合成が低下し、低蛋白・低ALB血症になると、血管から水分が滲出するため、臨床上は腹水の貯留や浮腫が出現する。
    γ-グロブリンは健常人の蛋白分画のうち、11〜25%を占める。肝硬変に近くなるとALB値は低下するが、逆にγ-グロブリンは肝臓の線維化を反映して上昇する。このため、ALBとグロブリンの比率(A/G比)が低下する。

ChE(コリンエステラーゼ)
ChEは、蛋白代謝を反映し、肝細胞変性の程度と相関する。
ALBと同様に、肝臓で産生される蛋白質で、高度の慢性肝炎や肝硬変では低値となる。しかし、肝機能異常があるのに、ChEが上昇している場合は、脂肪肝を疑う。

PT(プロトロンビン時間)・HPT(ヘパプラスチンテスト)

  • 凝固機能の低下と肝疾患
    主に血液凝固に関わる第I〜VIIの凝固因子のうち、第VII因子以外は肝臓で作られる蛋白である。このため、凝固機能が低下していれば、肝臓の凝固因子を合成する能力が低下していることを示す。
    凝固因子の血中半減期は5時間〜3日と短いため(ALBやChEは20日)、肝臓での合成能力が落ちてくると、すぐに減ってしまい凝固能も低下する。そのために、特に急性・劇症肝炎や、慢性肝炎の急性増悪の際には、凝固能の低下を調べれば(現在の)肝機能や重症度を正確に知ることができる。

PLT(血小板数)
血小板の異常は、量的な増減と質的な機能異常がある。
特発性門脈亢進症や肝硬変では、脾臓がうっ血して腫れ上がる(脾腫)ために、血球の破壊と脾臓内の血液貯留が増加し、血球が全体的に減少する。
このうち問題となるのは、血小板の減少であり、このため凝固能の低下により出血傾向の原因となる。

  • 血小板の減少と肝疾患
    血小板数は慢性肝疾患の進行度と関係する。
    血小板が10万/mm3 未満では肝硬変を考える。

BiL(ビリルビン)
ビリルビンは、寿命の尽きた赤血球が脾臓で分解され、そのとき放出されるヘモグロビンが主な材料となって作られる。ビリルビンはアルブミンと結合した状態で肝臓に運ばれ、肝臓を通って肝細胞内でグルクロン酸と結合したものをD−Bil(直接ビリルビン)、肝臓を通る前の状態のものをI−Bil(間接ビリルビン)と呼ぶ。
血液中にある2種類のビリルビンの量を合計したものがT−BiL(総ビリルビン)という。

  1. ビリルビンと黄疸
    血中のBiL値が2.0mg/dl以上になると、眼球結膜などに黄疸が認められる。
    • ビリルビンの生成量が増えすぎるために起こる肝前性黄疸
    • 肝臓の処理能力の低下や胆汁のうっ滞による肝性黄疸
    • 閉塞性黄疸など胆道系の通過障害による肝後性黄疸の三つに大きく分けられる。
  2. 上昇しているビリルビンと病態との関係
    • I−BiLが優位な場合
      溶血などにより、I-BILの生成量が異常に増えると、肝臓での処理能力が追いつかなくなるためにI-BILの値が上昇する。(肝前性黄疸)
      また、肝硬変では肝臓のビリルビン処理能力の低下と、脾臓の機能が亢進して溶血がおこることにより、I-BiLの割合が上昇する。
    • D-BiLが優位な場合
      肝臓自体の異常による肝性黄疸ではD−BiLの値が上昇する。
      急性肝炎・慢性肝炎の急性増悪・薬剤性肝障害では、通常肝内の胆汁がうっ滞するために、D-BiLの値が上昇する。

ALP・LAP・γ-GTP
胆道系酵素と呼ばれ、肝臓内または肝臓外の胆汁うっ滞を反映する指標である。
肝臓の閉塞性疾患に関して最も特異性の高い血中酵素である。

  1. ALPと肝疾患
    ALPは、由来臓器によって1〜6種類のアイソザイムがある。
    肝硬変では小腸型(5型)が上昇し、原発性・転移性肝癌・肝膿瘍などの限局性肝病変では1型が上昇するのが特徴である。
  2. LAPと肝疾患
    LAPは胆汁うっ滞や肝細胞の障害により上昇する。
    小児や妊娠後期の妊婦では、生理的にLAPの上昇がみられるので、肝疾患との鑑別が必要である。
  3. γ-GTPとアルコール性肝障害
    γ-GTPは、アルコール性肝障害で上昇する。1日2合以上の常習飲酒者では、非飲酒者に比べて明らかに高値となる。また、禁酒により速やかに低下するため、経過観察に有用な指標となる。また、薬剤性肝炎などでも高値となる。

ICG排泄試験
ICG(インドサイアニングリ−ン)排泄試験は、肝臓の解毒機能を利用して、肝臓の予備能力や肝障害の程度を判定する。
一般的にはICG液を体重1kg当たり0.5mg静注して15分後にどれだけICGが血中に残っているか(血中停滞率)をみる。

  • ICG排泄値の低下と肝疾患
    慢性肝炎では、代謝能が落ちるので停滞率は10〜20%になることが多い。

TTT(硫酸亜鉛混濁試験)・ZTT(チモール混濁試験)
血清に試薬を加えて濁る蛋白質があるかどうか調べる検査で血清膠質反応という。血清中に蛋白質、特にγ―グロブリンの異常の反応し変動する。TTTはIgMを、ZTTはIgGを主に反映するといわれる。
膠質反応の上昇は、肝臓の線維化を示すために肝硬変への進展を疑う。しかし、慢性肝炎でウィルスの活動性が高い場合にも膠質反応が著しく高値になるので注意が必要である。
TTTは慢性肝炎や肝硬変でも増加するが、急性肝炎特にA型肝炎で高値を示す。
ZTTは慢性肝炎の経過観察に用いられる。

ヒアルロン酸
肝線維のマーカーで、慢性肝炎と肝硬変の鑑別に用いる。
高値になるほど出来上がった肝硬変(肝細胞が線維に置換されている)に近づく。

肝炎ウィルスマーカー
肝炎ウィルスマーカーとは血液中に含まれる抗原やそれに反応して生成される抗体、またウィルスの本体を直接測定することで、ウィルスの感染状態や病期の判定を行う。

  • IgM-HA抗体
    A型肝炎の確定診断に用いられる。
    発症後早期に陽性化し、数ヶ月間一過性に陽性が持続する。ごく初期には陰性の場合もある。
  • IgM-HBc抗体
    急性B型肝炎のマーカーで、HBV感染初期に、3〜12ヶ月一過性に出現する。
  • HBs抗原・抗体
    HBVのウィルスの表面に存在する抗原・その抗原に対する抗体。
    抗原はHBVに感染している時に血中に現れる。
    抗体は通常、急性B型肝炎が治癒し、HBs抗原陰性後に出現する。
  • HBe抗原・抗体
    HBe抗原陽性例はウィルスの活動性が高く感染力も強い。HBe抗体陽性例では肝炎は鎮静化に向かい、感染力弱くなると考えられる。よって、HBe抗原からHBe抗体へ転換(セロコンバージョン)させることがまず重要である。
    しかし、ウィルスの変異株などにより肝炎が持続する場合があり、経過観察が必要となる。
  • HBV-DNA(定量)
    HBVのDNAを測定することで、血中ウィルスの存在とその濃度を知ることができる。
    HBVの増殖動態の把握、治療効果のモニタリングなどに有用。
  • HCV抗体
    HCVの感染を知るための抗体検査第1世代から第3世代まであり、第3世代が現在早期に高感度で検出できるように改良されている。
    肝炎治癒後も陽性が持続する。
  • HCV抗原(コア蛋白質)
    ウィルスの蛋白質を測定し、遺伝子(RNA)検査より操作が簡単なので汎用的である。
    測定感度も同程度で経過観察として用いる。
  • HCV-RNA(定性・定量)
    HCVの遺伝子(RNA)を測定することで血中のウィルスの存在と濃度を知ることができる。
    検査法は分岐DNAプローブ法とRT−PCR法があり、前者は高濃度の定量性に優れ、後者は最低検出感度に優れる。
    ウィルスの存在を初回に確認する際は、まずHCV-RNA定量を測定し、陰性の場合に高感度なHCV-RNA定性でウイルスの有無を確認する。
  • HCV群別(グルーピング)=セロタイプ
    HCVの遺伝子群を血清型に分ける。グループ1・グループ2がある。
  • 他の肝炎の検索項目ついて
    他にも様々なウィルス感染の肝炎(CMV・EBV など)や自己免疫性肝炎(AIH)など、肝炎を引き起こす原因の検索を行う。

AFP・PIVKA−U・AFP‐L3%

  • AFP(αフェトプロテイン)・AFP‐L3%(αフェトプロテインレクチン分画)
    AFPは胎児期にできる生理的蛋白であるが、出産後は低下し健常人では10mg/ml以下となる。しかし、肝細胞癌や肝芽腫・ヨークサック腫瘍・胃癌の一部などでは腫瘍が、AFPを産生するため、高値になる。
    AFPは肝細胞癌の全例で上昇するわけではなく、また肝癌を合併しない慢性肝炎や肝硬変でも上昇する例があり特異性に乏しい。
    AFPの中のAFP‐L3%が肝癌細胞に特異性の高いマーカーとして現在用いている。
  • PIVKA-II
    PIVKA−IIは肝臓でのプロトロンビンの合成過程において、ビタミンK欠乏により生じる異常蛋白のことである。
    肝細胞癌でなぜPIVKA−IIが上昇するのかは不明な点が多いが、AFPより肝癌を特徴つける腫瘍マーカーである。
    ただし、肝細胞癌以外でも、ビタミンK欠乏状態やワーファリンなどのビタミンK拮抗薬の投与している場合に上昇や、肝細胞癌でもビタミンK投与で低下することがあるので注意が必要である。

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