肝臓病の栄養療法

慢性肝炎、肝硬変などの肝臓病には、第二次世界大戦後、米国のパテック博士らが高たんぱく、高カロリー、高ビタミン食を摂ることで良い効果があると報告し、以後、肝臓病の患者様には、高たんぱく、高カロリー食が推奨され、一定の効果が示されてきました。

ただ、その後、慢性肝炎、肝硬変の病態の解明や高カロリー食による脂肪肝の増加などが指摘され、よりきめの細かい肝臓病の栄養療法が確立してきました。

バランスの良いカロリーとたんぱく質の摂取

肝臓病全ての方に、高カロリー、高たんぱく食が必要ではなく病態に応じたバランスのよいカロリーとたんぱく摂取が重要です。高カロリー摂取による肥満、ひいては糖尿病の発症は肝癌発生のリスクを高めます。適切な量と質の食事、十分なビタミンを摂って、肝臓の修復、再生をはかることが肝臓病の栄養療法の目的です。

補足)たんぱく質の減少は、血液中のアルブミン(代表的なたんぱく質)でわかります。アルブミンが低くなると、肝臓の再生能力も衰えます。肝臓に余力が残っている間に、必要な栄養を補い肝臓の悪化を抑えることが必要です。

分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤の補充

BCAAはたんぱくの合成を亢進しアンモニアを低下することで、栄養状態や免疫機能の改善に重要なアミノ酸の一種です。BCAAは食事のみでは補充できないため、肝硬変でBCAAが不足している方については、内服又は点滴静注による補充が必要です。

補足)たんぱく質のもとになるアミノ酸は約20種類あります。そのうち人の体の中でつくることができず食品などから摂る必要がある9種類のアミノ酸を必須アミノ酸といいます。

必須アミノ酸のうち、イソロイシン、ロイシン、バリンなどはその分子の形から分岐鎖アミノ酸(BCAA)といわれます。BCAAを多く含む食品としては豚ひき肉、鶏肉、さんま、まぐろ(赤身)などがあります。食事のみでBCAAの不足を補うことは不可能なので、BCAA製剤が用いられています。

就寝前食(LES : late evening snack)の重要性

肝硬変の患者様の多くは肝細胞の減少によって糖をグリコーゲンとして肝臓に貯蓄する量が減少し、絶食時には肝臓からの糖の放出が不十分となります。とりわけ、夕食から朝食までの絶食により肝臓からの糖の供給が減少し、早朝空腹時のエネルギー状態は健常者の2~3日の絶食状態に相当します。従って、就寝前に軽食(LES)を摂ることが朝のエネルギー不足を解決するのに有効です。これは肝硬変患者の空腹時に行なう検査時の重要な視点です。

鉄制限の必要性

研究の進歩により、血清鉄が肝臓(肝機能)に悪いことがわかってきました。食事療法を含む鉄制限が重要です。“しじみ汁は肝臓病に良い”のはむしろ間違いです。しじみは鉄分をたくさん含むからです。この鉄制限の考え方により、血液を1日200ml程度抜くことにより血清鉄を減らす「瀉血(しゃけつ)療法」が保険適応になり、肝機能を改善するなどの効果を上げています。

〈鉄が多く含まれる食材〉 ※のグループの食品の方が、鉄が吸収されやすい形で含まれています

貝類(あさり、はまぐり、しじみ等)、牛肉、豚肉、レバー、卵黄など

緑黄色野菜、海藻類、とうもろこし、大豆、納豆、豆腐、切干だいこん、ひじき、干しぶどうなど

健康食品による肝障害

少数ではありますが、健康食品による肝障害が報告されており、アガリスク、ウコン、プロポリスなどの健康食品の摂取も注意が必要です。とりわけ、ウコンの鉄含有量は多く、肝臓にとっては問題です。体に良いと思い摂取されている方もおられますが、肝臓病などの治療を受けておられる方は、摂取について主治医に相談していただくことをおすすめします。

当院では、患者様ごとに栄養サポートチーム(NST)による栄養支援を行っています。

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