当院では、韓国の成均館医科大学校と協同で、生活習慣病の予防や治療に役立つ知見を得ることを目的として長期検診調査をおこなってきました。
2006年からスタートしたこの協同研究は、2013年12月に当初の計画における最終年となりました。「生活習慣病に関する日韓疫学調査を終えて(かけはし47号)」
- 2009年、2010年に、この協同研究に関連した2本の論文が海外の雑誌に報告されました。(内容につきましては、広報誌「かけはし号外-日韓協同研究特集号-」をご覧下さい)
- こうした研究の成果は、登録者みなさまのご協力によって得られたものです。長期にわたるみなさまのご支援ご協力に感謝いたします。2006年から2013年までご協力いただきました生活習慣病に関する日韓疫学調査は、当初の研究期間を終了しましたが、2014年3月、疫学調査としての意義をさらに高めるために、4年間の研究を延長し研究期間を10年間とすることを検討することとなりました。
初年度に、この研究に登録していただいた方は、1224名ですが、必要書類が提出されなかった方、転居、転勤などで、受診が困難となり、登録を抹消された方も多く、1回以上追跡健診を受けていただいた方は758名です。
2014年6月、この758名の方々に追跡調査質問票を発送し、350名の登録者から継続参加の意思が確認できれば、2015年から2017年まで研究を延長し、これまで同様2年に一度の追跡検診を2回実施することになりました。- 2014年は、みなさまの追跡調査への参加意思を確認させていただく年となり、今後の研究継続に備え、7月頃から試験的に50名の検診のみを実施しました。
なお、2014年6月におこなったアンケート調査の結果、継続参加希望が約420名に達し、2015年春、韓国政府との予算の最終調整を行っておりましたが、6月にソウルでMERS(中東呼吸器症候群)の大流行があり、研究が1年間中断となりました。研究継続について、予算申請を行っておりましたが、 2016年春、韓国政府の最終決定により、この研究は終了することになりました。長い間、研究にご協力いただいた皆様に心からお礼申し上げます。(2016年7月1日)
協同研究の概要
- この研究の目的の一つは、高血圧、糖尿病、虚血性心疾患、肝疾患などの慢性疾患と生活習慣との関連性を調べることです。そのため、この調査に参加していただく方には、普段の生活習慣や、食事、日常生活などについての質問票の記入と、採血、採尿、身体測定にご協力いただきました。
検査(遺伝子検査を除く)は、神戸朝日病院にて実施し、栄養分析と合わせて受診者各個人にご報告いたしました。
この検診にご登録いただいた方
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□年齢:40歳~70歳 |
□在日韓国人・朝鮮人の方は、日本に住んで15年以上経過している |
□ほぼ健康体である(軽度の高血圧症や糖尿病などは登録可能) |
□がんの既往がない |
- この研究の日本での募集人数は、第1期が650名(日本人325人/在日韓国・朝鮮人325人)。第2期は460名(日本人150名/在日韓国・朝鮮人360人)で約1000名の方の登録でスタートしました。
1回目の追跡調査は約701名(2008年-2009年)
2回目の追跡調査は約650名(新規募集100名を含む)(2010年-2011年)
3回目の追跡調査は約600名 に実施しました。(2012-2013年)
4回目の追跡調査は、試験的に51名に実施しました。(2014年) - 国際協力研究を通して、韓国人と遺伝的な特徴が同じである海外に移住した韓・朝鮮民族とその移住国の民族の遺伝的特徴を調べることで、糖尿病、高血圧などの生活習慣病の疾患が、遺伝や生活環境、習慣などによってどのような影響を受けるのかを研究し、それぞれにあった予防や治療法などの開発に活かすことを目的に、韓国、中国(延辺・長春)、日本(近畿)で登録者を募集しました。
書 類
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事業参加同意書
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生活習慣質問票(27ページ)
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食物頻度調査(マークシート方式)(16ページ)
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追加の食事調査票(2ページ)
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共通検診項目票
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追跡検診 検査項目 (無料) |
身体測定:身長、体重、腰囲(ウエスト)、臀囲(ヒップ)、体脂肪率、血圧(両腕)
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血液検査:血液一般検査、血糖、HbA1C、尿素窒素、クレアチニン、AST、ALT、γ-GTP、総コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪、CRP、LDL-コレステロール、Na、K、Cl、Ca、尿酸、アディポネクチン) TSH、FreeT3、FreeT4、CEA |
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尿検査:(尿pH、尿糖、尿タンパク、尿潜血)(Na、K、Ca)
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腫瘍マーカー(CEA)
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動脈硬化検査
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骨密度検査(2012年から追加)
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頭部MRI(2014年から追加)※
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もの忘れスクリーニングテスト(2014年から追加)※
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【※2014年からの追跡調査の内容】
これまでの生活習慣病にかかわる健診内容に加え、 日本、韓国で問題となっている「認知症と生活習慣病の関連」が研究のテーマとして追加され、頭部MRI、もの忘れスクリーニングテストが検査項目に加わりました。
頭部MRI検査については、神戸朝日病院(神戸市長田区)、共和病院(大阪市生野区)で実施しました。
遺伝子検査について
今回の日韓協同研究は、韓国・朝鮮人と遺伝的な特徴が同じである海外に移住した韓・朝鮮民族とその人達が移住している国の民族の遺伝子の一部を調べることで、民族や生活習慣が、生活習慣病の発生に関与しているかを研究することが目的です。
特定の個人の遺伝子の特徴を調べるのではなく、民族や生活習慣などの要因ごとにグループ化し、疾患の発症リスクなどに関連している遺伝子の変化を調べます。
検査を行なうに際しては、氏名や生年月日や住所など個人を特定できる情報を取り除き、代わりに新たな番号をつけることで、検体が誰のものかわからなくする処理を行いますので、遺伝子診断の結果を個別にお知らせすることはありません。
なお、この調査でご記入いただいた情報は、個人情報保護法の規定に基づき、集約された統計データの形でのみ使用いたします。個人の情報としては、検査機関への依頼、結果の通知や定期的なご案内の発送以外の目的で使用することはありません。